top of page
検索
  • 執筆者の写真shunsuke masui

採用は打率

「採用は打率」という言葉があります。もう大分昔に、当時の上司から聞いた言葉です。


その意味するところは、どんなに秀逸な採用をしても、採用した人材が入社後に活躍するのは3割前後(野球の打率程度)ということです。


イチローレベルでも4割を超えることはなく、並みのバッター(採用担当者)なら、2割強といったところです。念のため補足をすると、残りの7割はすぐにに辞めてしまうということではなく、期待通りに活躍する人材が打率程度という意味です。(裏返しで、それほど期待していなかった人材が大活躍することも、よくあります)


一般的には「えっ、そんなに低いの?」と思うレベルかもしれません。私も当時、お客様(求人企業)に受け売りでそのまま伝えて「ふざけるな!」と怒鳴られた苦い経験があります。


でも20年以上もこの業界に身を置いて、数知れぬ企業の採用支援、自社の採用に関わってきた経験を振り返ると、確かに「そのくらいかも」と、改めて思うのです。


採用する側からすると、世の中には自社で「活躍する人材」と「活躍しない人材」がいて、前者をいかに選抜するか、という視点になりがちです。もちろんその要素がないとは言いませんが、実際の採用においては、採用時の巧拙以上に、採用後いかにその人材を活躍させるか、といった観点がより重要です。


人材は「品質が一定」の規格品ではありません。一人ひとりが異なる人材であることはもちろん、同一の個人の中でも、意欲、体調、そして能力や経験も変化していきます。


入社時に配属された職場の上司や同僚との人間関係、任された仕事、出会ったお客様によって、その後の実績や成長に、大きな差がつく可能性があります。また職場環境だけではなく、プライベートの人間関係、ライフイベントや、体調変化などでもパフォーマンスは大きく変わり得ます。


このように採用した人材の活躍には変数が非常に多く、偶然に左右される要素も大きいのです。完全に捉えた打球が野手の正面に飛べばアウトになるし、当たり損ねの打球でも飛んだ方向が良ければヒットになるように。


よって、採用時に活躍する人材かどうか見極めることも大切ですが、入社後に活躍する環境を整備することの方が、より重要だったりします。


そして実は、この観点は「逆の立場」つまり転職者からみても、全く同じことが言えます。自分が活躍できる会社、職場をいかに見極めるかということも大切ですが、それと同等かそれ以上に、入社後に、その選択を自分にとっての正解にする努力が重要だと思うのです。


思えば採用も転職も、絶対的な正解のない選択です。自社で絶対に活躍する人材や、自分に申し分のない会社を探し続けて、タイミングを逸してしまうよりは、ある程度情報が揃えば決断して、後はその選択を結果的に正解にする努力をする方が、事業や人生は良い方向に進む気がします。


「採用は打率」と言われると、「所詮その程度」といったネガティブな印象を与えるかもしれません。でも逆に「半分も超えたら天才」と考えてみれば、少し心に余裕が生まれてきます。なので私にとっては、良い意味で「肩の力が抜ける」ポジティブなフレーズなのです。

閲覧数:147回0件のコメント

最新記事

すべて表示

最近「リスキリング」や「リカレント教育」といった言葉をよく耳にます。政府が積極的に旗振りしていて、それなりの財政支出もあるようです。転職という文脈で語られることも多く、我々にも関連のあるテーマなのですが、個人的には、どうにも違和感を覚えます。 何がしっくりこないのか、今日は私なりに整理してみたいと思います。 まず「リスキリング ≒ 学び直し」という言葉には、ビジネスパーソンは「以前に学んだことはあ

人間は社会的動物であり、それがビジネスでも恋愛でも、対人スキルがとても大切です。この対人スキルの本質とは、相手の立場に立ってモノゴトを見ることができるか、言い換えると「相手目線」があるかどうか、に尽きるという気がします。 転職活動においても相手目線がとても重要です。ただ転職支援の仕事をしていると、相手目線の薄弱な方、さらには自分目線の強すぎる方を、時々お見かけします。 自分目線の強い方の特徴は非常

21世紀に目覚ましい成長を遂げた企業の調査によると、「成長の理由」のほとんどは「市場の成長(新市場の創造含む)」によるそうです。 企業が成長する方法というのは「市場が成長する」か「(市場規模は一定あるいは縮小する中)市場シェアを獲得する」の2つしかありません。この調査によると「市場の成長」が理由であるケースがなんと9割以上であり「市場シェア獲得」は1割未満であったそうです。 これは、とても興味深い

bottom of page