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  • 執筆者の写真shunsuke masui

短期と中長期

転職のお手伝いをしていると時々、転職にあたり「現年収は1円も下げたくない」という方がいらっしゃいます。現年収と「同水準以上」ということではなく、文字通り「1円」も下げたくないのです。


現在の収入が生活する上で本当にギリギリで、年収改善が唯一の転職理由というなら、まだ理解できます。ただ多くの場合「キャリアパス」や「ロケーション」などメインの転職理由は別にあった上で、このようなこだわりがあるのです。


こういう方々には、いくつかの特徴があります。


<特徴 1> 転職によって実現したいことに「優先順位」がついていない

私たちエージェントには、転職は「人生のチューニング」という概念があります。

初めて転職される方は、まるで転職が「人生の逆転満塁ホームラン」のように、全ての条件が改善されることを夢見てしまうかもしれません。でも実際の転職というのは、自分にとってより重要な何かを得るために、優先順位の低い何かを我慢する、ということだったりします。例えば「地元へUターンするから、年収ダウンはしょうがない」のように。


人生の優先順位をつけること(≒ チューニング)が、実は、転職の本質なのです。


<特徴 2> 今あるものは「未来永劫」あるという誤解

仮に、入社時に魅力的な年収オファーがあったとしても、入社後に期待されるパフォーマンスを発揮できなければ、その後どこかのタイミングで年収は下がります(可能性が高いです)。

内定時のオファー金額は、そこをスタートに上がり続ける、最低保証額ではありません。


また現職に留まったとしても、今の年収がずっと保証される訳でもありません。年功職の強い会社で、基本的に下がらない仕組みという場合でも、そんな会社に限って、雇用を継続できない環境に追い込まれる、なんてことは枚挙に暇がありません。


<特徴 3> 極端な「短期」視点

一般に、短期に結果を求める人ほど、中長期には結果を出せないことが多い気がします。


先日、社会人1-2年目の若い方と資産運用について話す機会があったのですが、とにかく大きく上がりそうな株式銘柄を探しているとのことでした。私から言わせれば、そもそも投資元本が大した金額ではないので、仮に倍になったところで知れているのですが、やたらと「簡単に」「短期間で」儲かりそうなことばかり追いかけているのです。得てしてこのような投資対象は、リターンに応じて(見合わず?)リスクも高く、倍になるどころか損をすることも多いです。


若いのだから、将来期待できる銘柄に少額投資を続けて「複利」で長期運用しては?と提案しましたが「そういうのは興味がありません」とのことでした。人はなぜか「短期的な果実」を過大評価して「長期的な果実」を過小評価してしまいます。


転職においても、転職直後の年収が数万円、数十万円上がる下がるということ以上に、入社数年後、数十年後に年収はどのようなカーブで変化するのか、或いは、その年収を稼げるだけのスキル経験が積めるのか、という観点こそ重要だと思います。


人生に「ゼロ・リスク」はありません。短期的にリスクがないように見えても、中長期的には、実は大きなリスクをとっている、ということが往々にしてありえます。


時々、この人は、あまりに絶対的な安定を求めすぎるがゆえに、かえって人生を不安定化させているのでは?という人に出会います。逆に、機会を求めて適切なリスクをとり、一旦は不自由な状況におかれても、結果的に未来の自由を得ている、と感じる方もいらっしゃいます。


慌ただしい時代だからこそ、目の前のことに執着しすぎず、時間軸を長くとって、俯瞰して見てみる、考えてみることが重要だと思います。


私自身、中長期視点を持って、時に必要なリスクをとれる人間でありたいと思っています。

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