top of page
検索
  • 執筆者の写真shunsuke masui

業界の問題

自分自身が長年携わってきた「人材紹介」という生業ですが、正解がなくて難しい分、奥が深く、やりがいがあって、飽きないというのが率直な思いです。


一方で、長年携わってきたからこその問題意識もあります。


それはコンサルタントのスキルやスタンスというレイヤーではなく、業界が抱える構造的な問題です。


現時点で、それらに私が明快な解決策を持っている訳ではないのですが、問題があることを自覚した上で、事業を行っていきたいと考えています。


またサービスを利用する求職者には、業界の裏側も理解した上でエージェントを選んでほしいと考え、このテーマについて書きたいと思います。


問題が生じやすい構造はいくつかあるのですが、まずは「課金形態」から始めます。



人材紹介業には2つの顧客があります。

人材を採用したいと考える「求人企業」と、転職したいと考える「求職者」です。


両者のご縁を繋ぐことで我々は糧を得ますが、求人企業からのみ費用を頂戴し、求職者へは(基本)無料でサービスを提供するという課金スタイルをとっています。


一見、個人に優しいサービスのようですが、価値提供対象が2つありながら、課金は一方のみという非対称性に問題が潜みます。


それは、対価をいただく求人企業の期待に「より」応えたいというバイアスが生じることです。


事業者のモラルが低い場合、求職者にとってベストな選択よりも、大量採用してくれる企業や、選考基準の低い(内定が出やすい)企業ばかりを紹介するということが起こりかねません。


また課金対象だけではなく、課金タイミングも悩ましいです。


人材紹介業では、採用が成功したタイミング(入社)で費用が発生します(「成功報酬」と言われます)。


人材紹介業がまだマイナーだった頃、採用手法は求人広告が主流でした。

求人広告は、広告を掲載するタイミングで費用が発生しますが、広告を出しても採用できない、あるいは応募すらない、といったことも(好況時には)珍しくなかったため、成功報酬は概ね好意的に受け止められていました。


ただ人材紹介という採用手法がメジャーとなった昨今、「入社」が本当に「成功」なのか?ということが問われています。


本来は、求人企業にとっても求職者にとっても、入社後に入社者が活躍する、事業が成長する、個人が幸せになる、ということが成功のはずです。


もちろん「幸せ」がテーマとなると成否判断が難しく、どこかでは線を引かねばなりませんが、それが入社タイミングで良いか?という問題提起です。


事業者のモラルが低い場合、求職者には良い情報だけを開示して、とにかく入社させてしまおう、入社後どうなるかは知らない、ということにもなりかねません。



長くなりそうなので、次回に続けます。


閲覧数:76回0件のコメント

最新記事

すべて表示

最近「リスキリング」や「リカレント教育」といった言葉をよく耳にます。政府が積極的に旗振りしていて、それなりの財政支出もあるようです。転職という文脈で語られることも多く、我々にも関連のあるテーマなのですが、個人的には、どうにも違和感を覚えます。 何がしっくりこないのか、今日は私なりに整理してみたいと思います。 まず「リスキリング ≒ 学び直し」という言葉には、ビジネスパーソンは「以前に学んだことはあ

人間は社会的動物であり、それがビジネスでも恋愛でも、対人スキルがとても大切です。この対人スキルの本質とは、相手の立場に立ってモノゴトを見ることができるか、言い換えると「相手目線」があるかどうか、に尽きるという気がします。 転職活動においても相手目線がとても重要です。ただ転職支援の仕事をしていると、相手目線の薄弱な方、さらには自分目線の強すぎる方を、時々お見かけします。 自分目線の強い方の特徴は非常

21世紀に目覚ましい成長を遂げた企業の調査によると、「成長の理由」のほとんどは「市場の成長(新市場の創造含む)」によるそうです。 企業が成長する方法というのは「市場が成長する」か「(市場規模は一定あるいは縮小する中)市場シェアを獲得する」の2つしかありません。この調査によると「市場の成長」が理由であるケースがなんと9割以上であり「市場シェア獲得」は1割未満であったそうです。 これは、とても興味深い

bottom of page